令和4年度 監督指導事例の公表を受けて

 厚生労働省は、令和4年度に長時間労働が疑われる事業場に対して、労働基準監督署が実施した監督指導の結果を取りまとめ、監督指導事例等を令和5年8月3日に公表しました。
 主な結果については、【結果のポイント(令和4年4月~令和5年3月)】【監督指導において違法な長時間労働を認めた事例】の通りです。

 事例の一つでは、倉庫業を営む企業において、勤務する従業員からの長時間労働の実態があるという情報に基づき、労働基準監督署の立入調査が行われました。調査の結果、業務量に対する人員配置が不十分であったこと等の要因から、違法な長時間労働(最長の従業員で1か月201時間)・ストレスチェック未実施(常時50人以上の事業所では1年以内ごとに1回)等が把握され、是正勧告を受けました。
 是正勧告を受けると、全ての是正項目が改善されるまで、労働基準監督署の指導は何か月・何年でも続き、企業は相当な労力・コストを割かれる事となります。また長時間労働や違法行為は、従業員の健康や安全、労働環境の悪化につながるだけでなく、企業自体にもマイナスの影響を及ぼす可能性があり、最悪の場合、企業の信頼性やイメージが損なわれ、経済的な損失や法的な責任を負うことになりかねません。

 このように、働き方改革が言われて久しいですが、法令等が守られていない実態も一部で見受けられます。公正で、安心して働きやすい労働環境を実現するためにも、企業そして個人が、法令等を丁寧に確認し、適切に運用することが求められます。

 厚生労働省では、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、例年11月に実施される「過重労働解消キャンペーン」において、重点的な監督指導を行う予定です。

 【結果のポイント(令和4年4月~令和5年3月)】
監督指導の実施事業場 33,218事業場

「違法な時間外労働があったため」
  是正勧告書を交付した事業場
14,147事業場(42.6%)
うち、最も長い従業員の時間数が
「月80時間を超えるもの」
5,247事業場(37.1%)
うち、最も長い従業員の時間数が
「月100時間を超えるもの」
3,320事業場(23.5%)

賃金不払残業があったもの 3,006事業場(9.0%)
過重労働による健康障害防止措置が未実施 8,852事業場(26.6%)

過重労働による健康障害防止措置が不十分なため
改善を指導したもの
13,296事業場(40.0%)
労働時間の把握が不適正なため指導したもの 6,069事業場(18.3%)